【植物学の知見を地域で活かす】植物学者:山名さんがいの町で見つけた新たなフィールドと描く未来

山名さんのこと:いの町の牧野博士

- それではインタビューよろしくお願いします。まず自己紹介をお願いします。
山名さん:
はい。兵庫県西宮市から来ました。地域おこし協力隊の山名です。26歳です。
- 移住するまでのことを教えてください。
山名さん:
はい。中学高校と高校は地元の学校に行き、大学も地元にある神戸大学に行きました。
- そうなんですね。 専攻は何を?
山名さん:
植物学ですね。理学部生物学科にいたので。
- 一回生からそういう勉強を?
山名さん:
そうですね。4年間勉強して大学院にそのまま行きました。
- なるほど、趣味はありますか?
山名さん:
趣味は山登りとか植物を見ることとか、植物を見るに関連したこと全般ですね。調べるもそうですし、栽培もそうですし。小学校の頃から好きでした。
- そうなんですね。植物に没頭するまでのきっかけとかってありますか?
山名さん:
元々貝殻から始まっていて、砂浜に行ってキラッとするものを探してキレイっていうところから始まっていて、同じくキラッとしているものということで今度石に興味を持つようになりました。
そこで大阪石友会という大人のサークルに両親に連れて行ってもらってました。その時に自然銀を探しにフィールドワークで三重の方に出かけたんですよ。すごい山奥で自分は西宮育ちだったのもあってそういったところは行ったことないようなところでした。
その山道でツリガネニンジンという植物を初めて実物でみて、図鑑とかでしか見たことなかったので「うわぁ!」って思ってちょっとびっくりしたんですよ。

- それまでも植物の本とかは見ていたんですね。
山名さん:
本は見ていました。けど実物は初めてだったので、今までは公園とかで咲いてる花を見て「名前何かな?」って感じだったんですけど、「図鑑のやつだ!」っていうのは間違いなくツリガネニンジンが初めてで、「すごい!」と思って。石の会だったんですけど、道すがらの花の方に目が移っちゃって(笑)。そこからですね。
- なるほど。そこから植物が好きなのが始まったんですね。そういうのもあって大学で植物学を学んでいたのですね?
山名さん:
そうですね。学部生の頃はひたすら勉強していました。で私が入った研究室の末次(すえつぐ)先生という先生が今風でいう牧野博士のような植物学で有名な方で、今も先生とは越裏門地区(山名さんが現在住んでいる地区)の植物のサンプルを送るなどしてやり取りはしています。
- なるほど。特技はありますか?
山名さん:
ちょっと変な話なんですけど、地図を見たらどこにどんな植物があるかすぐわかります。行かなくても分かりますね。
- すごい!行ったことのないところもですか?
山名さん:
はい。行ったことなくても谷の感じとか色んな知識で分かります。
- それはすごいですね。超越した特技ですね。ということは逆にそれが想像できない場所だと面白かったりするんですか?
山名さん:
そうです。そういうことです。あと別の角度からみだすと新しいことがわかってくることもあるんですよ。最近で言うと、この本川地域でも地学の知識を勉強しだすと植物学と組み合わさっていくところがあって・・・地層単位で植物の分布が変化するのをより詳しく理解できたりします。
- 植物学と地学はリンクしているところが多いのですね。
山名さん:
はい。土があって植物が生えてくるので、例えば、一回火山が噴火して灰とかマグマに覆われたところって一旦何にもなくなるわけじゃないですか。だから、そうじゃなかったところと焼かれたところでハッキリ差がでてくるわけですよ。
- なるほど。歴史的な背景とかも知っているとより理解度が深まりそうですね。
山名さん:
間違いないですね。たとえば、この集落でなぜこんな草原の植物が残っているんだろうって考え調べると、「昔この場所が茅場で茅をとってた」だとか。植物をやろうと思ったら歴史もそうですし、民俗学とかも活きていますね。
- 植物がその場所に生えているのには理由があるんですね。
山名さん:
必ず理由がありますね。全部が繋がっていって、楽しみ方は無限大なんですよ。
- なるほど。伝わります。話は少し変わりますが、今ハマっていることはありますか?

山名さん:
玄米ですね。自炊しているんですけど、最近白米高いじゃないですか。どうせ高いなら美味しい玄米を買うようになったんですけど、健康志向で。すごくコリコリして美味しくって。この冬とか一日四合ぐらい食べる時もありました(笑)
- すごいですね。休みの日は何をしていますか?
山名さん:
ダラーっとしています。家にいない時は山に行っています。本川地域外の山の植物を観察していますね。土佐清水とか四国一円行ってます。
- ここまでのインタビューで山名さんの植物への熱意がとても伝わりました。話は戻りますが、それで大学を卒業した後も大学院で植物の勉強をしていたのですか?
山名さん:
そうなんですけど、一年以内に辞めて小笠原諸島の母島というところに行きました。
- !?むちゃくちゃ遠いところですね。詳しく教えてください。
小笠原諸島:母島での生活

- なぜ母島に行ったんですか?
山名さん:
植物好きにとっては聖地みたいなところなんですよ。大学院にいたら野外に出かける機会がどんどん少なくなっていって・・やっぱり植物相で一番面白い所を見ておきたいなってなり母島へ行きました。
- 一般人からすると屋久島とかがすごい所のイメージがありますが、母島はすごいところなんですね。
山名さん:
たしかに屋久島も僕からすればめちゃくちゃ良いところです。でも、屋久島となればいつでも行けるんですよ。飛行場もありますし。でも小笠原は船が1週間に1便しかないんですよ。船で小笠原までは24時間かかります。なので1泊2日とか2泊3日とかができないんですよ。
- 遠いですね。
山名さん:
はい。東京とグアムの間ぐらいです。一応母島も東京都なんですけどね。車のナンバーは品川ナンバーです。沖縄と同緯度ぐらいですね。
- 母島はやはりずっと行ってみたかった場所なんですか?
山名さん:
そりゃあもう、憧れの地で、植物好きなら誰でも一度は行ってみたい場所です。

- どれくらい母島にいたんですか?
山名さん:
3ヶ月ですね。住み込みで漁師の手伝いみたいなのをしていました。それをすれば漁協の寮に入れたので。母島は小さい島なので移住しようと思っても住むところがないのがネックだったんですけど、手伝いをすることで寮に入って生活できました。めちゃくちゃ楽しかったです。手伝いはなかなか大変でしたけど、他では絶対できないような経験もできました。
植物全部が見たことないものでした。ほぼ外国なんで。日本で一番行きづらい時間がかかるところだと思います。
- 3ヶ月行ってその後帰ってきたんですね?
山名さん:
そうですね。その後に一度西宮に戻ってきたんですが、植物が魅力的な地域にまた行きたいなと思ってJOINという移住者向けのホームページを見て移住先を検討しました。

- なるほど、それで移住先を検討したのですね。詳しく聞かせてください。
移住するまで
- まず移住先の候補はどこだったんですか?
山名さん:
候補に上がったのが宮崎県の綾町という照葉樹林がたくさん残っているところと四国山地、あと和歌山県の南紀、この3地域のどれかでお仕事があれば働きつつ、植物をみたいなと思っていました。
まず、宮崎県の綾町はJOINで見ると当時地域おこし協力隊の募集をしていなかったんですよね。役場のサイトにもなくって。で、和歌山県の南紀の方は地域おこし協力隊の募集はあったんですけど、条件がマッチしなくって。四国の方も探した時に室戸だったかな?あったんですけど、いの町にある石鎚山がやっぱり決め手でした。
私は四国のことを当時全然分かってなくて石鎚山がどこにあるかも分かってなかったんですけど、いの町も石鎚山系の地域ということがわかって「石鎚山良いやん!いの町の地域おこし協力隊なら石鎚山を見ることができるなぁ」と思っていの町の地域おこし協力隊に応募しました。

- そうなんですね。地域おこし協力隊のミッションとも山名さんのやりたいことと合致したのですか?
山名さん:
そうですね。山岳観光なので、その兼ねあわせで山に行き、植物のことなどを来てくださった方に発信する、というのでお仕事になるのかなぁと思いました。例えば、地域おこし協力隊の募集でも「農家の実習」とかあるじゃないですか。それだとあんまり植物を見られないなぁと思いました。
- 自分の行きたい地域とやりたいことができるのがちょうどいの町だったということですね。
山名さん:
ガシッとハマりましたね。
- なるほど。移住するまでは不安はなかったですか?
山名さん:
一人暮らしは母島の3ヶ月間だけやっていたんですけど、母島ってなんだかんだ観光客も多く来ますし、僻地ではあるけど田舎ではないんですよ。なので本当の意味での田舎暮らし・地方は初めてかな、と。だから近くにコンビニすらないというのが感覚として分かってなかったので。そこは一応思うところはありましたね。
いの町:本川地域での生活
- 自炊しているとこのことでしたが、買い物はどこに行きますか?
山名さん:
愛媛県の西条市に行きますね。高知に行くより近いんですよね。
- 本川での一人暮らしが始まって2年ですが、慣れましたか?
山名さん:
問題なく慣れました。住めば都で何の不自由もなく過ごせていますね。ただ虫ははじめは嫌でした。アシダカグモですね。でも慣れましたね。
- 移住して大変だったこと・驚いたことはありますか?
山名さん:
何をするにも移動に時間がかかるってことが初めてだったんですね。西宮にいた頃はそんなことは勿論なかったですし、母島にいた頃も小さな島で集落がかたまっているので歩けば何でもできたんですよ。
ただいの町でもここ本川地域は何か買い忘れたとなったら終わりなんですよね。Amzonなどのネットショッピングは届くんですけど。
最初の頃って一人暮らしも初めてで必要なものとかも分かってなかったんで、買い物行って買い忘れた時は不自由でした。忘れ物もそうですし。
- この地域に合うのはどんな人ですか?
山名さん:
自然が好きな人ですね、それ以外だと娯楽施設もないですし。自然が好きな人には抜群ですが、そうじゃない人には自然が脅威として迫ってきます(笑)
- この地域に住んで満足度はどうですか?
山名さん:
星5ですね。全然不自由していないですし。やっぱり慣れるんですよね。最初は、嫌だなと思っていたことが嫌じゃなくなりましたね。実際、自然豊かなのは間違いないですし、面白みもすごいあって、生活のしんどいところも慣れてしまえばそんなに苦じゃないし。
- 満足度は星5!ステキな回答ありがとうございます。お気に入りの場所ってありますか?
山名さん:
私、寒風山が一番好きですね。山登りしてても楽しいですし、お花も綺麗ですし。国道194号線を西条側に行くと、でんっとそびえている山なんですけど、今の季節だと山に雪が被っていて本当に綺麗です。下から見ても良いし上からの見晴らしも良いですね。

地域おこし協力隊
- 任期とミッションを教えてください。
山名さん:
R5年4月〜R7年の3月で山岳観光の魅力発信ですね。ミッションは基本的にこれをやってね、というのがあって。それが「山の案内所」という観光窓口でいらっしゃった観光客の方に道路情報とか観光スポットの現在の状況などを発信するのが一つ大きなところですね。
1年目着任した時は、UFOラインの途中にある山荘しらさの2階にブースがあり、そこで「山の案内所」業務をおこなっていました。そこが1年で移転になり、2年目からは道の駅「木の香」の前の直販所内でやっています。
着任して1年目

- 着任して1年目はどういったことをされていましたか?
山名さん:
ミッションの時は来てくださった観光客の方の質問に受け答えをしたりだとか、パンフレットを紹介したりだとかそういったことが主な業務でした。
ミッション外で言えば、発信できる情報を仕入れるというのを意識していました。
私自身も地域おこし協力隊として来てこの地域のこと全然知らないわけじゃないですか。知らないけど、発信するのがミッションなのでなるべく住んでいる人だからこそ発信できる情報を提供したいなっていうのがあって。
まず何があるのか、どういうところがキレイなのかとか、そういう情報を収集するっていうことを意識していました。
具体的にいうと私は植物が得意なのでどんな植物が生えていて今何が咲いているのか、みたいなことをずっと調べていました。
最終的にはこの地域の植物全部をまとめた一つの冊子を作りたいので、その調査も兼ねつつ、登山中に見られる花、みたいなものを紹介できたらなとずっと探索をしていましたね。
1年目は暮らしのことも含めて考えることがたくさんあり、余裕はなかったですね。
- そうなんですね。着任して1年目はそんな感じでしたか?
山名さん:
あとは、1年目にクラウドファンディングもしましたね。
今言った植物の冊子にも係るんですけど、それを作る調査とか文献を集めるにもお金がかかりますし、本川地域の発信にも繋がるかなと思ってやりましたね。
あと、牧野植物園とかも、植物の名前を調べたりこんな植物ありましたと報告する時にはよく行きました。

やはり牧野植物園は四国一円で見た時にも植物の一大拠点なので、本当にお世話になっています。
牧野植物園も分布調査もおこなっているのでお互いWin-Winな関係で、今でも情報のやり取りをしています。
- 植物園も植物の研究とかをしているんですね。
山名さん:
実は植物園も研究がメインなんですよ。職員さんも観光案内の職員さんもいらっしゃいますけど、学芸員的なポジションの方もいて。研究員として入っているんですけど。
そういう方は地域の植物、特に高知県の植物の調査だとか製薬会社とコラボして生薬の研究だとか、そういったことをなさっています。
- なるほど。植物園への就職、研究室に行きたい、みたいな考えはなかったんですか?
山名さん:
なかったですね。もしそうだったとしたら大学に残っていたと思うので。
着任して2年目
- 着任して2年目のことを教えてください。
山名さん:
案内所業務でいうと、2年目に山荘しらさから直販所に場所が移動したんですけど、山荘しらさの頃は、山に上がってきている人が寄ってくださるんですよ。バイクの方だったり、登山の方だったり、趣味で来てくださって「今から○○行きたいんだけど天気は大丈夫かな?」とか「何時間ぐらいかかるかな?」みたいなことを聞かれることが多かったです。
直販所はおじいちゃんおばあちゃんが来られることが多くて、登山の方はあまり寄らないですね。バイクの方は道の駅「木の香」に行くことが多いので、案内する内容がゴロッと変わりました。
そもそも山に興味ない人に説明することが多くなったので、「ここからにこ淵までどれぐらいかな?」とか「ガソリンスタンドあるかな?」とか総合案内所みたいになりましたね。
- なるほど。場所が変わって案内する内容も変わってきたと。
山名さん:
逆に今までとは全然違うターゲットの方にアプローチできるようになったのは面白いなと思ってて。本当に色んな方がいらっしゃって。
- そうなんですね。ミッション外で取り組んだことは?
山名さん:
一年目は基礎的な情報の収集だったんですけれども、それで得られた成果をまとめるのが主でしたね。標本を作ったりだとか位置情報を記録していたものをきちんとマップに落としたりだとか、もちろん基礎情報の収集も続けていたんですけれども、資料・成果の整理ですね。
高知県未発見の植物を発見:論文の発表

山名さん:
例えば、寒風山で高知県では見つかってなかったシダ植物を見つけることができて、牧野植物園の研究者と共著で論文を出版できました。

そんな形で一つアウトリーチと言いますか、得られた成果の発表をしました。
あと、クラウドファンディングの返礼で、ご支援いただいた方に寒風山をご案内しました。
つい最近では、地域おこし協力隊退任後、定住のための生業づくりということでクリスマスローズという植物の栽培なんですけど、園芸農家的なことを始めました。
生業づくりのこと

- 生業づくりはいつから意識されましたか?
山名さん:
一年目からずっと頭にはありました。そこがストレスというか(笑)3年終わってしまうとそこからは何もない、「よーいスタート!」という感じなのでずっと考えていました。
漠然と街に働きに出てこっちに帰ってくるのもアリかなとは思ったんです。でも、それでは移動距離がネックになってここにいるメリットがあまりないかなと思いました。
「ここで住んで活きるような生業ってなんだろう?」って考えた時に山にいるんだから山で生産できるものが強いかなと思いました。
本川地域って夏はエアコン入らずで涼しくて冬に十分な寒さがある、となると山野草の栽培をするにはもってこいだなと思いました。
- 本川地域はそう言った植物には良い気候なんですね。
山名さん:
気候は良いし、ある程度土地もありますし、そういうのを活かせていけば山野草の栽培は生業になるんじゃないかなと2年目に思いました。
1年目から植物は育てていたんですけど「よく育つな」「西宮にいた頃より断然増えが良いな」というのは感覚としてもあって、山野草の栽培でもやっていけるかなと思いました。
- クリスマスローズだけを栽培しているのですか?
山名さん:
いや、生業として育てているのはクリスマスローズが主ですが、他にも育てています。
- クリスマスローズってどういう植物なんですか?
山名さん:
クリスマスローズはホームセンターでも売ってるポピュラーな花なんですけど、案外涼しいところが好きなんですよね。
開花まで6年かかります。定住して日が経つにつれてお花も増えていってタネも増えていくっていう感じです。
苗が届いたのはつい先日で、ようやく使わせてもらってる場所に並べることができたって感じですね。

- クリスマスローズの苗はどうやって購入しましたか?
山名さん:
地域おこし協力隊が活用できる「起業支援金」という補助金を使って苗を買いました。
着任して3年目
- これから山名さんは着任3年目になると思いますが、どのように一年過ごしていきたいとかありますか?

山名さん:
そうですね。来年はもっとアウトリーチに繋げていきたいですね。イベントでワークショップをしているんですけど、それを月1開催で、広報などにも載せて植物ガイドをしていきたいです。観光と植物で得た知見を結びつけることをもっと進めていきたいです。
あとは、園芸農家としてやっていくために直売所などに実際に山野草を出してみてマーケティング的なところも勉強していけたらと思います。
卒業後のこと
- 卒業後について教えてください。定住はしたいなと思いますか?
山名さん:
思いますね。まだ2年しか住んでいないんですけど、この時点でこんなに住み良いと思えているんで、他の場所に行きたいとかそういう理由がないですよね。
全然不自由もしていないのでここでやっていきたいなと思っています。
- そうなんですね。生業づくりもうまくいけば良いですね。
山名さん:ありがとうございます。
クリスマスローズも1年目から試験的に育てていましたが、虫もつかず病気にもならず育っていて冬の凍結にも耐えていたので順調に育ってくれると思います。
でも、この生業が軌道に乗るまでは植物に関する仕事を個人で受注して実際に現場仕事をしながらって感じですね。実際に仕事もちょくちょくいただいているんですよ。
- そうなんですね。どういう仕事ですか?
山名さん:
環境アセスメントのお仕事とかですね。例えば毎木調査って言って樹木がどれくらい育っているかを調査します。こういう現場仕事は移住した1年目からしています。あとは、植物のアセスメントという工事などをする時に希少な植物がないか調査する仕事もありますね。
- なるほど。この先どういった生活をしていきたいみたいなのはありますか?
山名さん:
私が住んでいる越裏門地域はご高齢の方が多いです。今は地域の方も元気でまだまだ活動できるんですけど、この先のこと考えたら集落の元気って段々なくなっていくと思うんですよね。
そうなった時に一つでも集落に産業があると活気も違うと思うんですよね。そのまま静かにさびれていくのは寂しいですよね。
植物を探していたら明治の頃の記録とかも見るんですよ。そして実際に、明治の頃に牧野さんが訪れた集落に植物を探しにいってみると、家の基礎は残っているけど全部スギ林になっているとか、そういうのってザラなんですよね。
そういう場所をいっぱい知っているので、例えばこの越裏門地区も50年後を考えた時に、私以外誰もいないような本当に寂しい集落になっているのか、全然ポテンシャルがあって移住してくれる集落として元気に残っているのか、ってやっぱり大きな違いだと思うんですよ。
園芸農家の屋号を「越裏門ナーセリー」にしたのも、ちょっとでも越裏門の名前が残るようにしようと思って決めました。
- 素敵ですね。
山名さん:
植物的な話でいうと、私が一番やりたいことは、この本川地域の自然を残して、きちんと活かすといいますかどこに何があるのかもはっきりわかっていて、ガイドしようと思ったらいつでもできて、で、研究者が「これ欲しいんだけど」ってなったら「これ本川のここにある」とか。そういう風に活用できる地域にしたいという思いがあります。
- その思いは、移住して山に入ったり、植物を探したりする中で芽生えてきた感じですか?
山名さん:
そこは間違いないですね。本川地域は単純な原生林とは違うんですよ。例えば小笠原諸島は完全に原生林、人の手が加わっていない自然です。屋久島もそうです。
でも、本川地域は昔からちゃんと歴史的な流れがあって石鎚山だって石鎚信仰で大昔から人が登っているわけじゃないですか。
だからある意味手付かずの自然ではないんですよ。ないんですけど、みんなが大切にしてきた自然であって、時の厚みみたいなのがすごく濃い地域だとわかったので、そういうのを蔑ろにしちゃいけないなって思いました。
おわりに
- これから移住しようと思っている人へのアドバイスを教えてください。
山名さん:
やっぱり移住前に車の目処をつけておくことは大事です。あと、高知県といえどもこの地域は特殊で、雪が降るので南国のイメージでこないことですね。でも一回来てしまったらすごく良いところだから、慣れるまでがんばれ!って感じで(笑)
- インタビューも終盤ですが何か言いたりてないことか、ありますか?
山名さん:
石鎚山の東側に笹ヶ峰というところがあるんですけど、実は、笹ヶ峰は自然環境保全地区に指定されています。これが日本でも十数箇所しかないんです。それこそ白神山地とか屋久島とか錚々たる国立公園のものと同格のものとして指定されているんです。

だからここの自然が豊かというのは単純に山が多いぐらいの話ではなくって、本当に日本全体で見ても生物多様性に満ちたポテンシャルの高い地域なんですよ。
これってあんまり地元の方もそうじゃない人も知らない話で、業界の人しか知らない話だと思います。
なので、そこを正確にアピールできたらもっと盛り上げられるはずなんです。学術的な知見だとか、今はフォーカスされていないけれども実は全国に誇れるんだよっていうのをどんどん発信していきたいですね。
- ありがとうございます。最後にメッセージをお願いします。
山名さん:
このいの町本川地域は移住するってなった時に都会の人が地方にきてしたいなと思うことが十分できる地域だと思います。
すごく魅力のある地域だと思うので、きても失敗は少ないんじゃないかなと思います。
地域の皆さんもウェルカムで人が温かいのもそうですし、のどかなところです。事件も全然起こらないですし(笑)オススメできる地域ですね。
- ありがとうございました。